Eマウントレンズの中で1番撮影枚数が多いFE 100mm F2.8 STF GM OSSをレビューします。
Eマウントの中望遠レンズには他にも素晴らしいレンズがたくさんありますが、
- 他とは一味違うボケ味を体感したい
- 花などの被写体に寄った撮影をする
- 子どもなど動きの速い被写体を撮る
- 写りを犠牲したくないけど出来るだけ軽いレンズがほしい
- あまり使っている人が少ない特別感がほしい
という方にはおすすめ出来ますが、レンズの性能や特徴を最大限に発揮しようとすると撮影シーンが結構限られるレンズでもあるので十分に検討すると良いでしょう。
私がFE 100mm F2.8 STF GM OSS購入を検討している際に欲しい情報が少なかったのでこの記事が参考になれば幸いです。
FE 100mm F2.8 STF GM OSSを購入した理由
①アポダイゼーションフィルター
STF(スムース・トランスファーフォーカス)、他のメーカーで言うところのアポダイゼーションフィルターを搭載されたレンズを使ってみたいというのが1番の理由です。
富士フイルムXマウントを使用していた時にアポダイゼーションフィルターが入ったXF56mm F1.2 R APDというレンズを使わなかったのが心残りだったのもあります。
XF56mm F1.2 R APDはコントラストAF限定でオートフォーカス速度がイマイチだったり、アポダイゼーションフィルターの入っていないXF56mm F1.2 Rを実際に使っていたので購入に踏み切れませんでした。
その点FE 100mm F2.8 STF GM OSSは位相差AFに対応していてピント合わせも高速ですしアポダイゼーションフィルターのありなしで悩む必要がないのが利点ですね。
②他の所有レンズとの兼ね合い
また、既に焦点距離100mmのレンズ「Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/100 ZF」を所有しています。
撮影者に実力以上の写真を撮らせてくれる圧倒的な描写力が特徴ですが、α7RⅢにオートフォーカス可能なアダプター「LM-EA7」を装着しても子どもを撮るにはピント合わせが難しい面がありました。
参考
レンズの繰り出し量が多いとLM-EA7を使用してもある程度フォーカスリングを手で回してピントを近づけないといけない
【参考記事】
逆にコンパクトでオートフォーカスも速いSONY純正の「FE85mm F1.8」も所有しているのですが、こちらは描写が(Carl Zeiss Makro-Planar T* 2/100 ZFなどと比べてしまうと)満足できないというジレンマありました。
FE 100mm F2.8 STF GM OSSを購入することでマクロプラナー やFE85mm F1.8を手放して1本にまとめられるかな、と思った訳です。
他に購入を検討したレンズ
FE 100mm F2.8 STF GM OSSの他に検討したのは
- FE 85mm F1.4 GM
- FE 90mm F2.8 Macro G OSS
FE 135mm F1.8 GM
の3本。
個人的に重要な部分だけ以下に表にしてまとめました。
FE 85mm F1.4 GM | FE 90mm F2.8 Macro G OSS | FE 100mm F2.8 STF GM OSS | FE 135mm F1.8 GM | |
重さ | 820g | 602g | 700g | 950g |
長さ | 107.5 mm | 130.5 mm | 118.1 mm | 127 mm |
最大撮影倍率 | 0.12 倍 | 1 倍 | 0.25 倍 | 0.25 倍 |
価格.com最安値(執筆時) | ¥181,543 | ¥114,870 | ¥148,999 | ¥182,999 |
純正の安心感や高速なオートフォーカスで選ぶならSONY純正レンズがやはり無難です。
描写ならFE 85mm F1.4 GMやFE 135mm F1.8 GMもキレイなボケと解像力を両立していて素晴らしいんですが、何せ重いのと価格もFE 100mm F2.8 STF GM OSSより少し高いのはネックでした。
私の腕力ではFE 100mm F2.8 STF GM OSSがギリギリって感じ。
等倍マクロでGMレンズに負けない解像を誇るFE 90mm F2.8 Macro G OSSは少しボケがざわつく感じが今回使いたい描写と違うかな、と思ったので除外しました。
これから購入する方はシグマのコンパクトで625gで割と軽い85mm F1.4 DG DNや等倍マクロながらボケもキレイな105mm F2.8 DG DN MACROの2本も捨てがたいですね(ほしい)
(参考)現在発売されているアポダイゼーションフィルター付きのレンズについて
現在発売されているアポダイゼーションフィルター付きのレンズは5本になります。
- FE 100mm F2.8 STF GM OSS(Eマウント)
- 135mm F2.8 [T4.5] STF(Aマウント)
- LAOWA 105mm F2 The Bokeh Dreamer(EFマウント、Fマウント、Eマウントなど5種類)
- XF56mm F1.2 R APD(Xマウント)
- RF85mm F1.2 L USM DS(RFマウント)
この中からSONY α7シリーズで使えるのは1〜3までになりますが135mm F2.8 [T4.5] STFはマニュアルフォーカス専用レンズ、LAOWA 105mm F2 The Bokeh DreameもEマウント用はマニュアルフォーカス専用でFマウント用をLM-EA7を介して使用することでオートフォーカスが可能になります。
それぞれの描写の違いについては以下の記事が参考になります。
外観
レンズの材質などは安っぽい訳ではありませんが特別な高級感もありません。
使っっているα7RⅢのボディの質感と似ているかな。
このレンズの特徴として
レンズ側にカスタムボタンが付いていたりMF/AFの切替レバーやレンズ内手振れ補正のON/OFFレバーが付いています。
またGMシリーズの単焦点レンズには絞りリングが搭載されているのは個人的には嬉しいポイント。
この絞りもクリック有り無しを切替可能なので動画撮影で絞りのクリック音を出したくない方にも良いですね。
α7RⅢに装着した感じは常用で持ち歩くギリギリのラインの重さと大きさかな ※個人の感想です
作例など
少し特殊なレンズなので前置きが長くなりました。
作例は全てLightroomにて現像してあるので色合いは参考程度と思っていただけると嬉しいです。
特に花などの植物を撮ると顕著ですが、びっくりするくらいピント面は解像しているのに前ボケも後ろボケもフォトショップで加工した?みたいな滑らかでとろける様なボケ味を生み出しているのが本レンズの特徴です。
ソニーのGMレンズのシリーズ自体が解像とボケの両立というコンセプトで作られているというのもありますが、FE 100mm F2.8 STF GM OSS(以下100GM)はその中でも象徴的なレンズと言って差し支えないでしょう。
普通のレンズなら背景ボケがうるさくなる場面でもアポダイゼーションフィルターの効果で写真を見る人に違和感を抱かせません。
レンズって解像すればするほどボケがざわつく傾向にあるんですが100GMにはそんな常識は通用しないようですね。
また、広角担当として100GMと一緒に持ち出すことが多いタムロンの17-28mm F/2.8 Di III RXDと比べるとファインダーを覗いた時点で色乗りやコントラストが全然違うことが分かります。
あまり分かりやすい作例がなくて申し訳ないのですが玉ボケの美しさもこのレンズを特筆すべきものがあります。
通常玉ボケは写真の周辺にいくほど口径食でレモン形のボケをしてしまうレンズが多いのですが、100GMは全くと言っていいほど中央の玉ボケと変わりません。
等倍で拡大して見ても色収差は殆ど見られませんし、逆光で撮ってもフレアやゴーストが出たことは1枚もないかも…。
水の描写も素晴らしくピントが合った子どものうなじに思わずため息が出てしまいます。
等倍マクロとまではいきませんが最大撮影倍率0.25倍はブツ撮りとしても十分活躍できるのも良いんですよね。
実効F値5.6と決して明るいレンズ訳ではありませんがレンズ内手ぶれ補正が搭載されていますし、ボディ内手振れ補正が搭載されているα7Ⅱシリーズ以降のカメラなら屋内など暗所でもISO感度を不必要に上げずに撮影が可能です。
100GMはオートフォーカスも超高速なのでちょこまか動く子どもの撮影にも重宝しています。
α7RⅢで使用している場合では瞳AFもしっかり追従してくれるので(瞳にバチっとピントが来ている写真を見せられなくて申し訳ないですが…)手持ちのEマウントレンズの中でも特に信頼しています。
子どもの繊細の肌も大人の解像されすぎると困る肌も忠実かつ克明に写すので場合によっては編集ソフトでテクスチャを下げたり、明瞭度を下げて写りすぎないように対応する必要があるかも知れません。
ボケが魅力のレンズですが絞って撮ってももちろん素晴らしい描写をしますので風景や建築物を切り取るように撮影するのも楽しいですよ。
大きめのレンズなので少し目立ちますがもちろんスナップにも使えます。
今のソーシャルディスタンスを確保しないといけない世の中では中望遠レンズが標準レンズになるといっても過言ではないですよね。
最後の写真はMakro-Planar T* 2/100 ZFと比較する為に試しにマクロプラナーとは別日に撮ったものですがボケ味が違うくらいで甲乙付けがたいですね。
光と影を上手にすくい上げてくれるマクロプラナーに対してどんな写真表現にも対応できる素直で極めて優秀な写りをする100GMといった感じ。
写りはパーフェクトな100GMの欠点
写り自体には欠点らしい欠点が見つからないレンズですが、使い勝手にフォーカスすると目に付く部分が結構あります。
1、あんまりボケてくれない
とろけるボケ味が特徴なのに他の単焦点レンズと比べてもあんまりボケないというのでボケが大好きという人は注意が必要です。
よくボケる写真の条件は
- F値が小さいこと
- ピントを合わせる被写体が近いこと
- 被写体と背景が離れていること
- 焦点距離が長いこと
になりますが、体感では被写体を2m以内に入れないと絞り解放で撮影しても大口径レンズらしい大きなボケ味は得られません。
被写体に近い場所から出来るだけ背景は遠ざけて撮影することを意識しないとごくごく普通、というかこのレンズである必然性が全くなくなりますので注意が必要です。
また、100GMを購入する前にボケ自体はF2.8相当との記事も見かけましたが、Makro-Planar T* 2/100と少し比較した感じでは絞り解放でもT値と同じF5.6相当のボケだと感じました。※気が向いたらしっかり検証して追記しておきます
2、ピントの合う距離の切替
100GMは他のレンズでは珍しく80cm以内の近接撮影をしたい時には切替をしないといけないのですがこれが結構煩わしい。
この切替をすることで鏡筒の中でレンズの位置を少し前に動かして近接撮影を可能にしているのかな?と想像しています。
なぜこのような構造にしたのか勝手に考えてみましたが、
あれ?最短撮影距離80cmまでだとアポダイゼーションフィルターの良さを生かせる写真を撮れる範囲が狭い…
↓
そうだ!最短撮影距離を短くしたらキレイなボケを生かせる機会が増えるかも!
ということで決まったんじゃないかな。 ※あくまで想像です
そんな構造なので80cm付近ではピントが合いにくいですし撮影距離を切り替えた後にオートフォーカスが出来るようになるまでにタイムラグが若干ですが発生するのがちょっと不便ですね。
3、単焦点レンズなのに暗い
作例の部分で手振れ補正が効くので撮影可能と書きました。
確かに手振れは防いでくれますが私のようにちょこまか動く子どもを撮りたい人はシャッタースピードを上げて被写体ブレを防ぎたい場面もあるんですよね。
屋内や曇天の撮影する場合、シャッタースピードを上げたいのにF (T)値が5.6なので光量が足りずにISO感度を上げないといけない場面が多々出てきます。
動かない被写体であれば問題ありませんが、出来るだけISO感度を上げたくない人は自分の使いたい想定シーンを理解していないと後悔することになると思いますよ。
少なくともここに書いてあることが理解できてない方やカメラ初心者の方にはおすすめ出来ません。
どうしてもソニー純正で画質の良い中望遠単焦点レンズが欲しいなら重いけど135GMの方が100GMと同様にすごく解像しながら良くボケて感動するので万人におすすめできます、重いけど。高いけど。
総評
ドラえもんに例えると写りは出木杉くんだけど使い勝手はジャイアンとスネ夫を足して2で割ったようなそんな感じ。
褒めてます。
ほぼしゅふ的まとめ
写りに欠点らしい欠点が見つからない。
幾人もの光学設計者が夢見た完璧な描写のレンズ。
それが100GMです。
他のレンズと悩んでる人におすすめしづらいんですが、GMレンズの中では使っている人が少ない玄人好みなこのレンズを使い倒してみるのも一興じゃないかなと思いますよ。
レンズの美味しい所を上手くコントロール出来る人ならその写りに感動する楽しいレンズですから。