XF56mm F1.2 R。
富士フイルムXシリーズの中でも尖った個性を放つ単焦点レンズです。
- 中望遠レンズという画角の狭さ
- 価格が地味に高い
- あまり被写体に寄れない
この3つの理由から、富士フイルムのカメラやレンズの購入を検討している方が手を出しにくいレンズでもあります。
それでも富士フイルムを使うなら一度はXF56mm F1.2 Rを使って見て欲しいオススメのレンズです。
その魅力について、作例を交えながら書きましたので読んで頂けたら幸いです。
XF56mm F1.2 Rの特徴、スペック
XF56mm F1.2 R (APD) | |
レンズ構成 | 8群11枚 |
最小F値 | F1.2 |
最短撮影距離 | 70cm |
最大撮影倍率 | 0.09倍 |
最大径×長さ | 73.2mm×69.7mm |
重さ | 405g |
フィルター径 | 62mm |
防塵・防滴 | なし |
手振れ補正 | なし |
ざっとスペックを並べましたが、大きな特徴は2つです。
- 最短撮影距離70cm、最大撮影倍率0.09倍と被写体に寄れない
- 単焦点レンズの中で一番ボケる※XF200mm F2 が発売するまで
今の所、富士フイルムで一番ボケる(同じ場所なら)レンズですが、一番被写体に寄れないレンズでもあります。
正直言って、テーブルフォトやフラワーフォトには向きません。
クセが強いですが、それ以上の魅力がこのレンズにはあります。
フォーカスリングの感触が好き
F値を解放で撮る時にはピントの合う範囲が少ないのでオートフォーカスした後にマニュアルフォーカスで調整したい時があります。
そんな時にフォーカスリングを動かすとその滑らかな動きに驚くことでしょう。
この滑らかさのおかげで、オートフォーカスでピントを合わせて後ににマニュアルフォーカスで微調整する、なんて使い方も簡単。
かっこいい見た目に使い勝手の良い動きの滑らかさが合わさって、良いレンズであることがビシバシ伝わってきます。
フードが円筒型ってどうなの?
これも好みなのかな~と思うんですけど、個人的にはこの円筒型のフードはあまり好きではありません。
プラスチックなので高級感もありませんし。
もともとフードを付けない派ですが、この見た目もあってフードは家でお留守番。
もし私が付けるならXF23mm F1.4 Rの金属製レンズフードがフィルター径が同じなのでこっちかな。
APD付きとどっちを買う?
全く同じレンズ構成で、中にアポダイゼーションフィルターを搭載しているXF56mm F1.2 R APD。
APD付のレンズの方がある程度背景が離れている時になだらかに、とろけるボケを得られるのが特徴です。
- 値段がXF56mm F1.2 Rよりも1.5倍近く高い
- フィルターの減光効果で実質的な最少F値が1.7になる
- わかりやすい玉ボケが出ない
という部分とのトレードオフになりますので、その価値を最大限に生かしたい方が使うレンズかなと思います。
このレンズを使った雑感、メリットとデメリット
私が個人的に使っていて感じる事についてまとめました。
ポートレートレンズの名は伊達じゃない
富士フイルムの肌色の発色+豊かなボケ表現としてのXF56mm F1.2 Rという組み合わせはポートレート撮影には最高にして最強です。
もっと近づいて撮影したい!と思う事は良くありますが、子どもの写真をメインに撮る私にとっては、この距離感がちょうど良かったりします。
被写体に寄れるレンズだとついつい近づいて撮ってしまって、後から見返すと顔のドアップ写真ばかりなんて事もあるので。
このレンズを使うとつい縦構図で撮りたくなるのはご愛嬌。
スナップを撮るのにも実は最適な画角
いやいやスナップといったらフルサイズ換算で35mm辺りを使うのが一般的でしょ?と思われる方もいるかもしれません。
撮影する人が実際に見えている情報をしっかり移すなら確かに35mmを使ったスナップが王道です。
それでもXF56mmで撮るスナップはまた違った良さがあります。
中望遠ならではの圧縮効果がかかった写真で、背景が程よく凝縮されるのが良い感じ。
また、画角が少し狭いのでシーンを切り取る形になりがちです。
ただ、それが撮影者の意図が明確かつダイレクトに伝わる写真になるのではないかと思ってます。
オートフォーカスは及第点
私はこのレンズをX-Pro2で使用しています。
AF-Sで使う分にはそこまで困ることはありませんが、AF-Cでは子どもの写真をメインで撮っている身としてはちょっと厳しいと感じました。
それでも以前に比べればピントの歩留まりが良くなりましたし、迷う回数は減ってきているいので、これからのカメラのバージョンアップでさらに変わるはず。
F1.2という圧倒的なボケ
やはりこのレンズの特徴はなんと言ってもF値が1.2という大口径レンズならではのボケ感です。
できるだけ被写体に近づいて撮ると背景が何なのか分からないほどボケるのはさすが。
注意点としては日中、絞りを解放(F値は一番小さく)で撮る時には露出オーバー(写真が想定より明るくなる)になりやすい点。
- 電子シャッターを使ってシャッタースピードを上げて対応する
- NDフィルターを使って減光させて露出オーバーを防ぐ
方法が考えられます。
このレンズで動きの激しい被写体を撮るのはオートフォーカスの関係で元々難しいので、気にせず電子シャッターを使って良いと思います。
ポイント
電子シャッターで動きの激しい被写体を撮ると歪むことがある
逆光だとフレアは結構出る
フレームの中に太陽光が入るような時には結構激しくフレアが出ます。
特に太陽の位置が低い朝や夕方の時間帯ではそれが顕著に出ますが、少しレンズの位置をずらすだけでも改善されるので安心して下さい。
フレアは敵!って方にはデメリットかも知れませんが、私はフレアは味だと思っている派なので全然OK、むしろ好きです。
この辺は好みが分かれる所でしょうか。
追記:1年ほど使用して他のレンズとの違いや作例など
早いものでXF56mm F1.2 Rを購入してから1年3ヵ月が経過していました。
この記事を書いた後にも様々なレンズを使ってきましたが、一番使っているレンズです。
広角を使いたい時にはXF18mm、どんな写真を撮るか分からない時はXF16-55mm、雰囲気重視で行くときはNOKTON classic40mm、解像感重視の時はマクロプラナー、といった風に使い分けているつもりです。
X-Pro2で使う時には同じ中望遠になるマクロプラナー。
このマクロプラナーと比べることで違いが判るようになりましたが、
- マクロプラナーはキレと艶のある写りで被写体が浮かび上がるような立体感のある写真
- XF56mmは後から見返した時に今まさにそこで見ているかの様な写真全体の雰囲気が良い写真
レンズの性能を数値として見たときにはマクロプラナーの方が勝っているかも知れませんが、性能だけで計れないのがXシリーズの大口径レンズの魅力かな。
XF56mm F1.2 Rを作例と共に振り返る
現像などで色味を調整している写真もいくつかあるので参考程度にしてもらえたら。
なんか家族写真以外は暗い写真が好きみたいです。笑
この1年でソニーのミラーレスを購入しようと思った時もありましたが、XF56mmの代わりになるような写りでコンパクトなレンズに出会えなかったので買い替えまでは至っていません。
逆に言うとこのレンズを使う為だけに富士フイルムを選んでも後悔しないでしょう。
ほぼしゅふ的まとめ
とにかくこのレンズを使えば良い感じの写真が撮れるという信頼感がすごい。
「もしかして私って写真がうまいんじゃ…?」と撮れた写真を見るたびにそう錯覚させてくれるレンズです。
もし1つだけレンズを残してあとはすべて売りなさい、と言われたら私はこのレンズを残すと思います。
それぐらい特別なレンズです。
あなたもこのレンズを使って撮れた写真をみて優越感に浸ってみることをオススメします。
次の記事はこちら
富士フイルムは他にも中望遠レンズのラインナップが豊富です。
どのレンズを購入するか迷ったらこちらの記事にレンズをまとめたので読んでみてくださいね。
中望遠レンズか標準レンズどちらを初めて買うか悩んだら
中望遠レンズの方が画角が狭くて万能性には欠けますが、個人的には標準画角(フルサイズ換算50mm近辺)のレンズよりも中望遠が好きですしオススメしてます。